JMAA 公式ステートメント
M&A支援における立場と職業倫理について
2026年2月17日
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会
レビューパネル
大原達朗 松原良太 早嶋聡史
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(以下、JMAA)は、設立以来15年間にわたり、M&Aの一般的な理解の普及と、M&Aにおいて買い手または売り手の立場に立つM&Aアドバイザーの育成に取り組んでまいりました。
昨今、M&A市場の拡大とともに、仲介方式(売り手と買い手の双方に、同じアドバイザーが就任すること)を中心とした支援モデルが広がり、業界団体の設立やルール整備も進んでいます。JMAAは、こうした動きを市場の発展の一側面として尊重すると同時に、M&A支援の本質について改めて私たちの立場を明確にしたいと考え、本声明を発表いたします。
■ JMAAの基本姿勢
JMAAは次の原則を重視します。
- M&Aは目的ではなく手段である
- 仲介方式か否かの方式の決定主体はクライアント(売り手あるいは買い手)である
- M&Aアドバイザーの立場の変化はクライアントへの明確な説明と合意を前提とする
- M&Aを「やらない方がいい」という判断も尊重されるべきである
■ M&Aアドバイザーの本質的役割は「意思決定支援」
JMAAが考えるM&Aアドバイザー像は、取引成立を第一義とする存在ではなく、クライアントの意思決定の質を守る存在です。M&Aは実行すること自体が目的ではありません。進める、条件を見直す、延期する、そして場合によっては、中止する。これらすべてが合理的選択肢に含まれるべきであり、M&Aアドバイザーの重要な役割は、こうした選択肢を公平に提示できる立場を維持することにあります。
■ JMAAは「方式」ではなく「判断の質」を重視
JMAAは、アドバイザリー方式(売り手または買い手のいずれか一方のアドバイザーに就任すること)と仲介方式のいずれも、M&Aにおける有効な支援手法の一つであると認識しています。どの方式が適切かは、案件の状況、当事者の体制、情報の非対称性、交渉力の差などによって異なり、最終的に判断すべき主体は常にクライアントです。JMAAは特定の方式を前提としたり、推奨する団体ではありません。
■ 仲介方式が適切となるケースも存在
一方で、現実のM&A実務においては、以下のような状況も存在します。
- 売り手・買い手双方にM&Aに対する知識や経験がない
- 売り手あるいは買い手のいずれかに十分なスキルと経験を有しないM&Aアドバイザーが就任する
- アドバイザリー形式でスタートしたが、交渉が前に進まず、構造的な橋渡し役が必要となる
- M&Aを限られた期限内に成立させる必要がある
このような場合、クライアントの合意を得て、売り手側M&Aアドバイザーが仲介的立場に移行し、双方支援を行うことが合理的なケースもあるとJMAAは認識しています。方式は固定的なものではなく、案件の状況に応じて変化し得る実務的選択肢の一つです。
■ 「仲介ありき」でのM&Aアドバイザーとの契約は慎重であるべき
JMAAが懸念するのは、以下のようなケースです。
- 売り手のM&Aアドバイザーとして契約しながら、初期段階から仲介を前提とする
- 買い手紹介の条件として仲介方式への合意を求める(仲介方式でないと売り手に買い手を紹介しない)
- クライアントが十分にアドバイザリー方式と仲介方式の違いを理解しないままM&Aが進む
このような場合、クライアントの認識とM&Aアドバイザーの立場に齟齬が生じ、意思決定の質が損なわれる可能性があります。JMAAはこれを方式の優劣の問題ではなく、説明責任と職業倫理の問題であると考えます。
仲介は取引を円滑にさせる役割も担います。M&Aアドバイザーはクライアントの意思決定を守る役割を担います。どちらも市場にとって必要な機能です。JMAAは特定の方式を推進する団体ではなく、「M&Aを成功させること」よりも、「意思決定を成功させること」を支える団体であり続けます。
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