売却することの社会的意義
M&Aという言葉自体は浸透してきたものの、M&Aという言葉の本質的意味を理解している人はまだ多いとは言い難く、M&Aと言えば、大企業同士だけで起きうる話と考えがちです。また「経営不振企業に対する救済策」「敵対的買収」「乗っ取り」「マネーゲーム」「ハゲタカ」といった否定的なイメージを持っている人も多いと言えるでしょう。
しかし、近年、後継者問題で多くの企業が廃業に追い込まれている事から、事業承継の必要性が議論される様になり、その対策としてM&Aが注目される様になってきました。 日本の年間廃業者数は約29万社と言われ、そのうちの7万社が「後継者不在」を理由に廃業しています1 。これだけの雇用が完全に喪失された場合を仮定すると、失われる従業員の雇用は毎年約20万人~35万人に上ると推定されます2。 例えば、7万社のうち、M&Aを利用する経営者が20%と仮定し、そのうちの30%の取引が成立したとすると、4,200社もの優良企業を廃業せずに継続する事を可能にします。 また、そこに従業員が5名いるとした場合、21,000人の雇用を守ることにもつながります。
この様にM&Aを経営手法として積極的に活用することにより、「優良企業の承継」や「雇用の継続」の実現を可能にします。 つまり、M&Aは、我が国が抱える経済的な問題を解決する社会的意義の高い経営戦略であり、M&Aが浸透する事で日本経済が得られるメリットは多いと言えるでしょう。
また、M&Aにより企業を継続する事は、「経営者にとっての社会的責任の遂行」とも言えるでしょう。
1 事業承継ガイドライン20問20問 中小企業庁
2 中小企業庁HP http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h18/H18_hakusyo/h18/html/i3210000.html